あひるのえほん
SINCE 2000.9.7

ちまちまくくりん

ちまちまくくりん は、いつも真っ暗な水の中で暮らしています。
生まれてから、一度も明るいところに出たことがないので、
ちまちまくくりん は、自分がどんな形をしているのか、どれくらいの
大きさなのかも、わかりません。

ちまちまくくりん は一日の半分くらいは、もぞもぞしています。
後の半分はじっーと止まっています。

ある日、ちまちまくくりん がいつものように、もぞもぞしていると、
割れ目のようなところに、入り込みました。
それでも気にせず、もぞもぞしていると、
右へ左へ、上へ下へ、
途中じっーととまったりもしながら
どんどんどんどん、
割れ目の奥に進んでいってしまいました。

ちまちまくくりん は決まった形がないので、
どんな狭いところでも、もぞもぞしていると
するりと通り抜けてしまうのです。

しばらくの間、ずいぶんと細いくて長い割れ目の間を
もぞもぞしたなぁと思ったら、
なにやらとんでもなく広い場所に出たようです。

そこは、ちまちまくくりんが
今まで経験のしたことのない
明るい場所でした

ちまちまくくりん は生まれてからずっーとずっーと
真っ暗な場所に住んでいたので
自分の姿も、それ以外のものも、見たことがありませんでした。

ちまちまくくりん はとても嬉しかったのです。
いろんな色があって
ずーっと向こうまでが
突然、現れたのですから

うっすらとした明るい水色が周りの全てを満たしていますし、
灰色や茶色のごつごつしたかたそうな所があったり
なにやら自由に動いているいろんな色の所もあります。
ちいさい形のところが沢山、そろった動きで素早くあっちこっちにいったり
みどりの細長いところがゆらゆら揺れてたりします。

ちまちまくくりん は、
初めて見た素敵な自分のすがた全部に安心して
ゆっくりと初めての眠りにつきました。