あひるのえほん
SINCE 2000.9.7


I pray

〜2〜
(大事な大事な宝物)

ちっちゃい女の子がトコトコ
あっちからこっちへ
こっちからあっちへ
何をしているのかと思えば
広げたスカート一杯に
色んな小石を集めてる
丸い小石をあっちで1個
黒い小石をこっちで1個
うんしょうんしょと歩くくらいに
集めた小石は一杯だ

夕暮れがやってきて
母親が女の子を呼ぶと
女の子は集めた小石を落さぬように
もって帰って枕もと
大事な大事な宝物
怒られたって
何したって
捨てたりなんか致しません

女の子の宝物
実はもう一つ
それは小さなもらった絵本
何気なく拾った小石1個で
不幸な男の子が幸せになるお話
「そんなに小石をどうするんだい?」
もし女の子が聞かれたら
「もちろん不幸な男の子にあげるのよ、この小石がないと彼は幸せになれないの」
女の子はこう答えます

ちっちゃい女の子がトコトコ
広げたスカート一杯に
小石を抱えてトコトコと
もう女の子は小石を集めてはいません
だって部屋一杯に置ききれないくらいの小石が集まったから
後はみんなに集めた小石を
1つづつ渡してあげるだけ
「ありがとう」
「わぉ!」
「大事にするわね」
みんなの嬉しそうな顔を想像すると
女の子はとっても嬉しくなりました

広げたスカート一杯に
集めた小石をうんしょうんしょ
あっちではい!
こっちではい!
色んな小石をあげてます
おじさんも
男の子も
女の人にも
はい!
だって不幸な男の子が
小さい男の子の格好しているとは限らないから
あっちではい!
こっちではい!

広げたスカート一杯の小石はなかなか減りません
だって
はい!って女の子が渡すと
「しらんぷり」
「いらないよ」
「あら、ありがとう、でも私はいらないわ」
どうやら不幸な男の子はどこにもいないようです
集めた小石はいまだに一つも減りません
それでも女の子は
あっちではい!
こっちではい!
毎日毎日渡しつづけます

あんまり心配になったので
ある日お母さんが言いました
「あのね、誰もそんな小石はほしがらないわよ」
女の子は胸をはって堂々と答えました
「でも、止めないわ。だって私が止めたら、不幸な男の子は永遠に幸せになれないのよ」



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